オルゴールの伝言
私毎年怪談のツアーをやっているんですけどね、これはそのスタッフの女性の話なんですが、 その方がお話してくれたんですよ。 稲川さん、不思議なことがありますねって言うんですよ。 彼女は我々の業界のスタッフですから、なかなか家に帰る時間がない。 旦那さんも居らっしゃるんですが、旦那さんも同じような仕事をしているんで、 やっぱり家に帰る時間がないんですよね。 二人揃ってってことはなかなかない。 たまたまその日は二人揃ってアパートに帰ることができたんで、一緒に食事をして、その日は布団を並べて寝たんですね。 夜になったら何処からともなくオルゴールの音が聞こえてきたって言うんですよね。 ふっと目が覚めてあれ?と思った。 見ると旦那も目を開けている。 それで旦那が、あれ?下の部屋、赤ちゃんが生まれたのかね? よくありますよね、赤ちゃんが生まれたらくるくるまわりながらキンコンキンコン鳴るやつ。 あれかねーなんて話をしながらしばらく二人で聞いていたんですが、 彼女が あれ、違う。赤ちゃんのやつはこんな曲じゃないでしょう。 あれ?この音うちじゃない?って言った。 いや、多分これうちのよきっと。 起き上がって隣の部屋に行ってみた。旦那もついてくる。 隣の部屋でオルゴールの音がしている。 やっぱりうちだったんだ。 戸棚を開けると中でオルゴールが鳴っている。 なんで突然鳴りだしたんだろうねと思って、慌てて止めようとするんだけどどうにも止まらない。 ずーっと鳴っている。イエスタディがずーっと鳴っている。 仕方ないなぁと言ってティッシュを詰めてようやく音は止まった。 何で鳴ったんだろうなぁ?おかしいなぁ、おまけに止まらないしなぁ? そうねぇって言いながら彼女はふと不安に感じた。 というのはこのオルゴールというのは、彼女の弟さんの親友、その親友のお母さんがくれたんですが これは元々弟さんの親友のものだったんですよ。 どういう経緯かしらないけど、それをくれたんですね。 それで大事に持ってたって言うんですよ。 彼女が不安に感じたっていうのはその元々の持ち主である弟さんの親友っていうのが長いこと病院に入院しているんですよね。 そして次の日さっそく実家の方に電話をかけてみた。 ていうのも自分のお母さんもその弟の親友のお母さんと大変に仲がいいんです。 電話した。 お母さん! なあに?どうしたの? ちょっと気になったんだけど、お母さん、あのさ、山本くん何も無い? バカなこと言うんじゃないよ。入院はしてるけど大丈夫だよ。元気でもって暮らしているんだから。 あっそう。 何どうしたの? いや何だか気になったんで。うん大丈夫こっちも元気だよ。 大丈夫大丈夫、山本くんもちゃんと病院に居るよ。 それで電話はそこで切った。 ところが3日もしたらば山本くんがどうも危ないらしい。というような連絡が来た。 日頃からとっても親しい付き合いをしていますから、夫婦揃って早速見舞いに行ったわけですよ。 でもどうも今夜が峠だと。 山本くんのお母さんを見ると、どうも気の毒だし、そのまま帰るわけにはいかないから 今日は俺達も泊まりだなってことで付き合った。 みんなの願いも虚しく、山本くんはその夜に亡くなったんですね。 それでその後葬式やなんやも付き合った。 疲れきって二人はまたアパートに帰ってきたんですね。 そしたらこういう状況だからあれこれと連絡が入っている。 それでその留守番電話の記録を見ようとして、旦那がカチッとスイッチを入れた。 あ、○○ですけど、何々がこうなりまして、ああなりまして・・・時間は○時になりました。 了解ですよね、ちゃんと時間と日にちを言っているんですよ。 ピッピー ○○○子です。えーっと、XXの件なんですけど、こんなふうに進んでまーす。何月何日何時でーす。 って言って切れた。 それで次も ○○ですー。何々の件、このように進んでます-。よろしくー。ただいま何月何日何時でーす。 って言って切れた。 ずーっと聞いていたと思ったら、ピッと切れて突然オルゴールの音がする。 それもイエスタディ。 その電話の向こうで聞こえている音は明らかにオルゴールでイエスタディ。 自分の家のオルゴールの音じゃないし、明らかに留守番電話から流れてくる。 ずーっとイエスタディが流れている。 やがてプツッと切れた。 それで旦那のほうが、おい、最後の電話って何月何日何時って言ったっけ? 奥さんが、これこれこうでこうだよねって答えた。 おい待てよ。あの電話の後にこれがすぐ入ったとすれば、この時間って山本くんがちょうど死んだ時間じゃないか・・・? 電話から流れてきたイエスタディの曲、あれはきっとお別れのメッセージかもしれないですよね。





