マネキン

895 :1/5:2009/07/08(水) 15:37:04 ID:Z2TMKfT2O
投下。読み難かったらすまん。
文章だとあんまり怖くないかな…。

今から十数年前。厨房の頃の話。


夏休みに山口県にある父親の実家に遊びに行った。
山に囲まれたド田舎で、まわりには何も無い。
夏休みでテンションが上がっていたのか、
帰ったその足で従兄弟(同じく厨房)と川へ泳ぎに行った。
自転車で1時間くらい走り、山奥にある大きな川に着いた。
しばらく遊んだ後に河川敷で休んでいると、従兄弟が何かを指差した。
見ると川の上流のそばに小さな道がある。
川遊びに飽きていた私達はその道に興味が沸き、行ってみる事に。
しばらく河川敷を歩いていると、草が刈り取られた道が脇に現れた。

暑さと蜘蛛の巣に辟易しながらその道を進んでいると突然開けた場所に出た。
その広場(?)には錆だらけの自転車が放置してあり、
前カゴには使い古された長靴が山盛りになっていた。
一番上に置かれた長靴の中に千枚通しが数本入っていた。
そのすぐ奥に廃屋。と言っても物置小屋程度の大きさ。
傾いたドアのすき間から中を覗いてみた。
中は薄暗くて、静まり返っていた。きな臭くて埃っぽい。
ドアを開けたら屋根が落ちそうだったので、さっきの道の続きを探検することに。

5分も歩くとまた開けた場所が見えて来た。

「!?…何か居る…?」

一瞬ゾクッとした。
そこにはバス停で見かける青くてプラスチッキーな長椅子。
こちらに背を向ける形でその椅子に座っている…人?

いや、裸、坊主、首や手足の継ぎ接ぎ。
…マネキンだった。

一安心。そして道はここで終わっていた。
長椅子の下には段ボール箱か3つほど置いてあり、
周囲には何故かタウンページが散乱していた。

マネキンの顔が見たくて、意を決して正面に回り込んだ。

薄汚れているものの顔は普通だった。胸が膨らんでいたので女性用らしい。
何故かマネキンの手には千枚通しが握られ、ガムテで固定されていた。
普通はここで恐怖感を抱くものだが、好奇心が上回った…

「ん…マ○毛生えてる…?」

女性の下腹部に黒い物がこんもりと盛られている。
従兄弟は「妙にリアルなマネキンだなw」と笑ってた。
私はカツラがずり落ちたのかなと思った。

だが、どれも違った。

それはイヤホンだった。大量の黒いイヤホン。
腹部に空けられた無数の穴にびっしりと差し込まれている。
これは流石にヤバいと感じ、大急ぎで引き返した。
途中さっきの廃屋の前を通りがかると自転車が一台無くなっているのに気付く。
それからは転げ回るように一心不乱に帰宅。事なきを得た。

今でもイヤホンを見る度にあのマネキンを思い出す。
3年程前に山口に帰った時、従兄弟とリベンジしたんだが、
廃屋のあった場所は更地になり、マネキンや自転車や長椅子も無くなってた。
でも道の跡は草に覆われながらも残ってた。
あのマネキンは何だったんだろう。

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