人面相
私の恐怖物の撮影がありましてね、これは撮影場所は東京じゃないんですよ。 地方の山の中にある家なんですがね。 話しが一つ終わると休憩に入る。 そうしましたらね、出演してくれているエキストラの女の子達が、わたしのところへ集まってきたんです。 で、その中の一人の女の子が私に、「あの…幽霊を見ると早死にするって本当ですか?」って言うから、 「いや、それはどうかな?」って、そんな話しをしてたんだ。 そうしながら、ひょいっと見ると、ちょうど私の斜め前に座っている女の子が目に入った。 その子はきちんと正座しているんですが、履いているズボンが、今流行りのあちこち破れているようなズボンなんです。 それで、そのズボンの膝あたりがパックリと破けてて、その子の膝が見えているんですが、そこにミミズ腫れが出来てるんです。 それを見て私が、「ほらみろ。そんなズボン履いてるから、ケガするんだぞ」って言ったら、 その女の子が、「あっ…これ、うちの猫にひっかかれたんです」って言うんですよ。 稲川「え?自分ちの猫に?」 女の子「ええ…」 それで、みんなが笑ったんですよね。 女の子「私は今、両親と一緒に住んでるんですけど、私の部屋には幽霊が出るんです。」 稲川「え?見たの?」 女の子「ええ…突然部屋のあかりが、チカチカチカチカ点いたり消えたりするんです…」 稲川「んー…それは、接触が悪いだけじゃないの?」 女の子「いえ、それがそれだけじゃないんです…夜中に電源を切ったテレビが突然ついて、気味の悪い女の顔が写った事が三回位あるんです」 稲川「ああ…そう…」 女の子「それでいつも私の部屋に来ていた、うちの猫が突然部屋に来なくなって… 強引に部屋に入れたりすると、壁のほうに向かってシャーって…それで毛を逆立てて逃げて行っちゃうんです。」 稲川「へぇ…それはいつ位からそうなったの?」 女の子「ええ、三ヶ月位前なんですけど…彼と河口湖のほうへドライブへ行ったんです。 それで湖畔を歩いている時に、突然彼が『はいプレゼント』って私の腕にブレスレットをしたんです。 『え?これどうしたの?』って聞いたら、『拾った』って言うんです… そのブレスレットはなんだか数珠のようで、なんだか気持ち悪いから後で捨てようと思ってポケットに入れたんですけど… そのまま忘れて持ってきちゃったんです…」 稲川「ふうん…それで、その数珠どうした?」 女の子「それが…どこにいったかわからないんです…」 稲川「ああそう…それで最近は何かあった?」 女の子「ええ、それが今はもう居ないようなんです」 稲川「それじゃあ、猫は部屋に来るようになった?」 女の子「ええ。それでこの前わたしが猫を抱えて部屋にいたら、その子が急に私の膝を引っ掻いて逃げていっちゃったんです。」 それでまたみんなが笑ったんだ。 それで私は、またひょいっとその子の膝を見たんだ。その時に、あら?と思った。 その子が足を伸ばして、その傷を私に見せてくれた。 そこには大きなズボンの破れがありますよね?そこにミミズ腫れと、赤いアザのようなものが見えてる。 彼女が足を伸ばしていて、私がちょうど横から見るような角度なんですよね。 その瞬間、わたしは驚いた。それはどう見てもね、ズボンの破れ目から、向こう側からこちらを覗いている顔に見えるんですよ。 正面から見たらどうかわからない。でも、私の横の角度から見ると明らかにそうなんです。 こっちを覗いているんだ。 これは…と思ったんですよね。 よくありますよね?昔から。人面相(じんめんそう)とかジンメンチョウって言われるやつが。 膝や肩や背中や…お腹のあたり。赤いアザが出来て、膿んで腫れてくると人の顔になる。 そしてそれが段々段々大きくなってくると、その人間の生気というんですかね?魂を吸ってさらに大きくなっていって、 元の人間のほうが弱って死んでいっちゃうっていう話ですよ。 これは、まさしく人面相じゃないかな?って思った。 それで私は「ああ、こんなに腫れちゃって…これちゃんと医者で見てもらったほうがいいよ?」って言いながら、 またその膝を見た。 まぎれもないんですよ。それは破れ目から、こっちをジーっとみている顔なんです。 ゾーっとしました。それは紛れもない人面相、そのものなんですよね。 彼女は、「自分の部屋には幽霊がいるんです」と言った。 でも、「今はもう居ない」って言った。 そうじゃないんですよね。部屋にいるんじゃなくて、その霊は彼女にもうとり憑いているんですよね… 私は彼女に「こういう時はこうしなさいねって…後は神社に行って下さいね」って言いましたが… あるんですよね…ああいうものがね。自分でも驚きましたね…





