I鳴峠

169 :I鳴峠 1/4:2010/05/21(金) 00:01:40 ID:ywS2JqVy0
九州の有名な心霊スポット、I峠での話。

現在は旧道・旧トンネル共に封鎖されているが、そこにまだ入れた頃。
とある学生たちの男女グループが、1台の車に乗り合わせ、肝試しに訪れた。
使われなくなったトンネルの中央あたりに車を停め、彼らは外に出て、
円になってしゃがみこみ他愛もない話をしていた。
「何も出ないじゃん」などと軽口を叩いていると、
グループのうちの一人の女性(Aとする)が、
じっとトンネルの入り口を見つめていることに彼らは気がついた。
「どしたの?」と問いかけると、Aはそれに答えず、バッと後ろを向いた。
そしてすぐさまAは勢いよく振り向くと、鬼のような形相で「車に乗って!」と叫んだ。

えっ? と戸惑う彼らをドアの中に押し込むように車に乗せた後も、
「早く出して! 早く、早く!」と、運転手を殴らんばかりの勢いで叫び続ける。
その剣幕に押され車を発進させたのだが、Aはまだ錯乱状態。何を問うても答えにならない。
と、その時。運転席のドアが、外側からガンガンと鳴った。何かを叩き付けるような激しい音。
思わずスピードを緩めかけた運転手だが、Aがなおも「いやー! 逃げてー!」と叫ぶので、
アクセルを踏み直し、トンネルを抜け、しばらく走ったあたりのコンビニの駐車場に車を停めた。
その頃には、Aはようやく叫ばなくなってはいたものの、ひくひくと泣いている。
時間をかけて落ち着かせ、何があったのかを問うと、しばらくは黙って俯いていたが、
やがて小さな声で、ぽつりぽつりとAは語りだした。

「みんなで、トンネルの中に座ってた時にね。入り口の方で、ライトが光ったの。
 ふたつ見えたから、車だって思ったのね。
 誰か入ってきたんだ、邪魔だから移動しなきゃって思ったとき・・・
 その、光が。凄いスピードで、私たちを、すり抜けていったの。
 びっくりして振り返ったら・・・その車が、Uターンしてこっちに来たの!
 だから、逃げなきゃって思って・・・」
Aの他に、その光を見た者は誰もいなかった。
にわかには信じられないと首を振る皆に、Aはなおも続けた。
「そのあと・・・運転席のとことのドア、凄い音がしたでしょ。
 あのとき、追いついてきたその車が、私たちの車の真横を走っててね。
 おかしいよね? そんな車幅なかったでしょ?」
その通りだった。

「おじさんが、運転席にいて・・・おばさんが、助手席にいて。
 それで・・・助手席のそのおばさんが、窓開けて、こっちに乗り出して、
 私たちの車をバンバン叩いてたんだよ! 誰も見えなかったの!? ねぇ!?」
誰ひとり、口を開く者はいなかった。
たしかに車のドアは激しく鳴っていた。けれど、そんな車は見えなかった。
ふたたびAは泣き出した。落ち着かせるため、運転手が飲み物を買いにいくと車の外に出た。
何気なく振り返った彼が、ものすごい叫び声をあげた。
車外に飛び出した者たちが見たのは、白い車のドアに無数に浮かび上がる、真っ赤な血の手形だった。

I峠には決して、白い車で行ってはならない。

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