生ムツ

□投稿者/ 田原 誠 -(2002/02/07(Thu) 17:45:50)
 以前読んでいながらその時には忘れてました。

 うちの奥さんが生ムツを見た時のお話。

 奥さんが友人と(残念ながらぼくは同行せず)日光わん○ゃん村へ行ったそうです。
「松本紳助」に登場する豆柴の故郷ですね。
 犬たちは広い牧場のようなところに放し飼いになっており、伸び伸びと遊んでいる
姿はそれはもう可愛いものだったようです。
 そして丁度一行がそこを訪れた日は、動物といえばこの人、ムツ○ロウ先生が
トークショーを行なう日に当たっていました。日頃から素敵な○かれ野郎として
敬愛する師のお言葉を直々に賜れる素晴らしいチャンスです、当然逃す筈はありません。

 集まったお客さんたちもそうした環境にぴったりの母子連れも多く、とても和やかな雰囲気の中彼は登場しました。
 トーク自体も結構ナイスだったようですけれど、ぼく自身聞いていないこともあってまるっきり忘れました。
 とにかくその後質疑応答コーナーに。
 一人の子が元気良く手を挙げます。

 「一度先生の王国に遊びに行きたいんですけど、行ったら泊めてもらえますか」

 先生は例によってどんな頑なな心の動物でも心を開いてしまうような満面の笑みを浮かべつつ答えます。
もう引きこもりも涙を流して立ち直りそうな素敵な表情です。

 「ああ、いいですよいいですよ。いつでもいらっしゃい。きっと泊めてあげますから」

 素晴らしいじゃあありませんか。さすが動物を愛する広い心の持ち主、人間に対しても慈悲の心で包んでくれます。
 しかしエンジンのかかった彼のトークはこの程度で止まることはありません。

 「実はね、昔青年が突然泊めてくれ、って来たことがありましてね、その時
馬のお産で忙しいし人手も足りないんで断っちゃったんですよ」

 「そしたらね、翌朝彼が近くの池にぷかーっと浮かんじゃいましてね。その後警察が来たりなんだりもう大変だったんですよ。
それからは誰か来たら必ず泊めてあげるようにしてるんです。だから大丈夫ですよ」

 この間彼の笑顔は少しも変化無く、こんな楽しい話はない、というばかりの満足げな表情を浮かべていたそうです。

 その時客席側のどう受け止めて良いか判らず、かといって笑うことも出来ず固まって
緊張に覆われてしまった聴衆たちの空気などまるで感じられないかのように。

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