妙なバスに乗ってしまった

290 :1:2010/01/30(土) 10:45:21 ID:F1pkt0W50
長くなるけど、ほんのりと投下。

我が家には、訳あって母の親友母子が一緒に住んでた。
子の名前をAとするが、Aと俺は本当の兄弟以上に仲が良い。
一緒にいると何かと頼もしいんで、先日二人で某国を旅してきたんだが、
その国の寂れた観光地で、妙なバスに乗ってしまったんだな。

その国ではバスは必ず遅れて来るものだが、それは定刻通りに来た。
それだけでも十分変なのに、中の様子はそれ以上におかしかった。
バスのいたるところに、季節外れのサンザシの花が飾られており、
それより気になったのが、乗客達の不自然な態度だった。
一方には酷く暗い顔をした人々がいて、俯いて身動き一つしない。
もう一方には明るい顔の非常に騒がしい人々。
ヨコハマタイヤみたいな気味の悪い笑顔を浮かべており、
歌ったり喋ったり踊ったりと、やたら陽気に騒いでいた。
楽しそうに見えなくもないが、どこか排他的な雰囲気を纏う人達で、
声をかけようなんて気には全くならなかった。

暗い人達は、彼らにちょっかい出されても身じろぎせず俯いていたが、
教会の前を通過する時だけ、弾かれた様に身を起し、一斉に十字を切ってた。

妙な雰囲気の中、しばらくは我慢して大人しく乗っていたものの、
段々気味悪くなってきて、俺は予定外の所で降車ブザーを押してしまった。
だが運転手に「まだだ!」と一喝されて、停留所を通過されてしまい、
英語わからん俺の代わりにAが抗議してくれたが、取り合ってくれないようだった。
Aが怒鳴ってても他の乗客の様子は全く変わらなくて、
俺はただ不気味に明るい人たちの顔を見るのが怖くて縮まってた。

で、しばらく口論が続き、イラついたAがふいに煙草に火をつけたんだ。
普段吸うところ見たことないのに、珍しいなと思っていたら、
それまで俺達のことなんて無視してた明るい人たち全員が、
突然ヨコハマタイヤ顔をこっちに向けた。
そして同時に表情を一変させ、真っ赤になって怒り出し、
英語じゃない、聞いたことのない言語で喚きながら俺達に詰め寄って来た。
んで俺とAは車外に引きずり出され、まさかのフルボッコw
かなりの距離を走って逃げたのに、奴らは群がるように追いかけてきた。
無我夢中で走り続け、Aに腕引っ張られてトゲトゲした生垣乗り越えると、
ようやくあきらめたようで、ゾロゾロとバスの方に戻って行った。
俺には何が起こったのか本気で訳分からなかった。

その後立ち寄った教会で、神父さんにそれまでのこと話したら、
(怪しい目で見られはしたが)こんなこと教えてくれた。

「そいつらはこの世のものではなく、
 明るい顔をしたのは、きっと悪いスピリット。
 暗い顔をしていたのは、運悪く奴らに捕われた人間の魂で、
 死ぬこともできぬまま、イエスに救いを求め続けているのだろう。」

その辺りでは、「定刻の針の上に訪れる者は禍を連れてくる」
という言い伝えがあった。
ほんの数十年前までは、俺達と似た体験をしたなんて話も多かったそうで、
帰ってこられた人もいるし、定刻のバスに乗ったまま行方不明の人もいるんだとか。
助かるのは普通敬虔なキリスト教徒だけだから、
俺達が助かったのは実に運が良かったと言われた。

なんでも、大抵のスピリットは火を嫌うから、
煙草を吸う人間を自分達の乗り物に乗せておきたくなかった。
また、ハリエニシダ(俺達が乗り越えた生垣のトゲトゲ)は、
昔から魔除けになるといわれているから、
生垣を乗り越えてきたのもよかったのかもしれない、と。

なんで非喫煙家のくせに煙草吸おうとしたのか、
また、無茶して生垣乗り越えたりしたのかAに聞いたが、
「すごい偶然でしたね(`・ω・´)ノノノシ!」ということらしい。

ちなみに、タコ殴りにされたというのに、
俺達二人とも引っ掻き傷や小さな痣位しかなく、生垣を超えた際の傷のほうが酷かった。
どう説明すればいいか見当もつかず、結局警察にも届けてないし。
生垣の修復はもちろんやらされたし。
そして俺が持っていたバッグには、子供よりも小さい足跡がたくさん付いていて、
怖いから即効捨てて買い替えたし(´;ω;`)

331 :本当にあった怖い名無し:2010/02/02(火) 22:29:30 ID:jWrPqQfB0
こんにちは。>>290に同行していた者です。
書き込みは初めてなので、失礼があったらお許しください。

290が書き込んだ体験は確かに恐ろしかったのですが、
私としてはバスに乗り込んだ時の290の様子のほうが不気味で気にかかり、どこかで吐き出したい気分でして・・・

そもそも例のバスは、私たちが待つ停留所に向かって走ってくる時すでにおかしかったんです。。
”ヨコハマタイヤ顔”をした連中が皆窓から身を乗り出して、私たちを品定めするように指さしながら大騒ぎしていたんですから。
はじめはジャンキーの集団でも乗っているのかと思い、危険だからこのバスは見送ろうと何度も頼みましたが、
290は全く聞こえない様子で私を無視して一人でどんどん乗り込み、その挙句、我に返ったように突然脅え出しまして。

後々話を聞いた神父に言わせると、”スピリットたちの住む世界”に近い人間、例えば病人、老人、子供、妊娠した女などは、奴らに目をつけられやすいらしく、
290が今後大病でも患うのではないかと気が気ではありません。

こんな体験ですが、「ほんのり怖い話」になっているでしょうか?

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