妙に古びた将棋盤

796 :本当にあった怖い名無し:2009/12/17(木) 15:18:04 ID:YLM5lBkU0
自分は霊がいたら「判る」人だけれど、「見える」ことは少ない。
そんな中でハッキリ見えたケースを書いてみる。

家族旅行に行って安宿に泊まった時の事、
自分は夜行性なもんで、親が寝るような時間になっても眠くはない。
部屋に居ても親の寝る邪魔になるだけだろうからと、
煙草とライターと小銭入れを持って、フロントの辺りにふらっと出て行った。
フロントは当然無人だったが、近くの自販機で缶ビールとツマミを買うと、
半分ロビー、半分小上がりのようなとこ(フロントの向い)に行き
ビールを呑んで煙草を吸っていた。

小上がりには、妙に古びた将棋盤(6寸)が置いてあって、
この宿に来た時から気にはなっていた。(霊的なもんでなく、自分も将棋趣味だから)
ふと、変な気配を感じると、いつの間にかその将棋盤が移動してて
その前に半透明というか1/4透明というかのお爺さんが座っていて、
盤面を苦悶の表情で見つめている。

まあ、見た感じイヤな雰囲気ではないので、
これは祟る呪うタイプの霊ではないんだなと判断した。
向うは一心不乱に読みを入れていて、自分に気付いて無い様子。
で、将棋好きというのは困ったもんで、その局面が気になった。
ソーッと将棋盤&爺さんのとこに近づくと、盤の横に座ってみた。
駒はボヤッとした燐光ででも出来てるかのような感じだったが、
一応、その局面は読み取ることは可能であった。

「おじいさんの手番なの?」幽霊に声をかけたところ、
やっと自分に気付いてくれたようで、ユックリと頷く。
局面は、一見するとおじいさんの負け。
こうやってもダメ、ああやってもダメ、と自分もその局面での手を読んでみた。
「これはもう、受け無しで負けみたいですね」 そういうと首を振る。

負けてないのか…そうなると本腰を入れて真剣に読む。
「あ~!」10分か15分経った頃だろうか、
ふと、逆転の1手があることに気付いて思わず声を出す。
その感じでおじいさんにも伝わったんだろう。
こっちをジーッと真剣に見つめる。

手を伸ばし4六の桝目を指し示すと、おじいさんは再び考え込む。
「桂だよ、▲4六桂でおじいさんの勝ちになってるね」
そういうと、おじいさんは、盤面を食い入るように見つめる。
手の意味を理解したのであろう、軽く一礼すると、スーッと消えていった。

あとで聞いたところ、その盤は女将のおじいさんの形見だとかで、
おじいさんは県の名人にあと1勝のとこで敗れ、
来年こそ名人になるぞと修業をしていたが、風邪をこじらせ、肺炎になり亡くなったんだという。
あのときの局面は、その負けた将棋だったのであろう。
女将は、時々、あの将棋盤が動いてることがあると言っていた。

前の話へ

次の話へ