暗闇の中の下山

55 :本当にあった怖い名無し:2009/10/18(日) 01:43:30 ID:Liu9ckAD0
5年くらい前、初夏の頃の話なのですが、
友人2人と山登りをしたのです。いつも思いつきで行動するから
山を登り始めたのがすでに15時を過ぎていました。
標高800m程度で、普通に登れば1時間弱、慣れた人が走って登れば
30分で登頂できるぐらいの山です。私たちは何度か登ったことがあるので、
今回は普通の登山道ではなくて、獣道っぽいところを登ってみようということに
なりました。中腹にある神社の駐車場まで車で行き、そこから草木茂る細い道を
歩きはじめました。斜面を登って行けば必ず頂上に辿りつけるという安易な思い込みで。

険しくなっていく山の中、人跡のない山の中腹に秋葉神社っていう祠を見つけたり、
岩肌の洞穴にしめ縄と御札が貼ってあったりして、「うわwwすごい」とか
「さすが、霊山だなぁ…」と皆で感心してたのですが、足場の悪い道なき道を
登ってきたので予想以上に時間がかかってしまい、ケーブルカー駅に着いた時点で
すでに17時半を過ぎていました。降りの最終ケーブルカーはもう出てしまってて、
下山するのも徒歩が確定してしまいました。辺りは薄暗くなっていましたが、
「せっかく来たし、山頂の社にお参りしてから下山しようか。」とそこから
さらに少し登ったところにある社を巡りました。この時点で太陽は沈んでしまっていて、
売店や観測所の灯りが私たちの足元を照らす唯一の光でした。

下山ルートは普通の登山道を選びました。売店の電光が山の中まで届くわけもなく、
私たちは携帯の液晶画面の明かりでぬかるむ足元を照らして慎重に進みます。
正規ルートとはいえ舗装されているわけではないので暗闇の中の下山は、
想像以上に困難でした。皆斜面に滑り落ちないように、無言で歩み続けます。
降り始めてから30分ほど経ったときです、先頭を歩いてた友人が何かをしゃべりました。
短い単語です。私は足元に注意を払っていたので聞き逃しました。次に
真ん中を進んでた友人も言葉を発しました。「・・に・は・・・。」
これも上手く聞きとることができませんでした。

友人たちの後を追って何を言ったのか聞き返そうとしたその時、
私は視界の端に捉えた何かに対して、悪寒が全身を奔りました。
人です。登山道の脇に跳び箱大の岩があって、それに人が腰掛けているのです。
「!!!????????」一瞬固まり、同時にこの状況に頭の中で様々ツッコみました。
ここ山ン中だし!もう真っ暗だし!アンタ誰だ!?何やってんの!?ちょwwwwこえぇぇww
予想だにしなかった状況に頭はパニック状態でした。数秒の長い間を於いて、
竦みながら漸く私の口からでてきた言葉は、「コンニチハ…」でした。
彼からの返事はありません。私は彼にもう一瞥もくれずに先に進んだ友人を追いました。
安全な足場の確保など二の次です。ただただ前に、二人に離されないように必死で
ついて行きました、背後に強烈なプレッシャーを感じながら。

下山開始から1時間弱…、私たちはついに車を停めた駐車場まで辿り着きました。
緊張から開放された私たちは自販機でジュースを買い、車の中で猛烈に喋り合いました。
話題はもちろん、山中で遭った謎の人物についてです。二人が彼に気付いたとき、
私と同様な思考をし、そして同じく「こんにちは」と言ったみたいです。
30分ほど車内で会話しながら彼を待ちましたが、下山してこなかったので私たちは
そのまま家路につきました。結論として、私たちが会った彼は天狗だったのではないか?
ということに落ち着きました。だって…、暗い山の中に人がいたら怖いじゃないですか。

以上、駄文すみませんでした。

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