母が毎晩家を出る様になった

676 :第1章:2009/08/19(水) 06:26:42 ID:BJkf8+g2O
母が毎晩家を出る様になった。僕と幼い妹は夜中に家を出て行く母の後を追うが車に乗り込まれていつも置いていかれてしまう。
朝になると少し疲れた顔をしているが母は朝食を用意して僕らを起こしにくる。
会話も普通にしてくれるが夜になると出て行く事については答えてはくれない。質問すると怒り出すので僕らは夜の事には触れないようにした。

僕も子供ながらに夜の仕事をしているんだと自分に言い聞かせていた。

母は日に日に窶れていき僕らとも一切会話しなくなったがそれでも夜になるとフラフラと車に乗り出かけて行く。

この事を近所に住む祖母に相談すると次の夜から祖母が来てくれた。
出かける母を必死に止めるが祖母は窶れた母に跳ね退けられてしまう。
泣きながら僕と妹も追いかけるが全く相手にされない。
また出かけて行く。

変わり果てた母に僕らは不安を覚え祖母に泣き付く毎日が続いた。

僕らも諦めかけていたある日、家に知らないおばさんが来ていた。
祖母には『このおばさんがお母さんを助けてくれるから大丈夫だよ』と言われるも不安はなくならない。友達の家へ行くように言われ家を出されてしまったが僕と妹は家の裏手に回り部屋の様子に聞き耳を立てていた。

中からはお経みたいな声と甲高い金の激しく鳴る音と呻き声、奇声が聞こえる。怖くなった僕は妹を連れてなるべく家から離れた友達の所へ逃げた。

夕飯時に帰宅すると祖母が台所に立ち母は布団に横になっていた。
おばさんはいなくなっていたが部屋には煙のような臭いが漂っていた。

夕飯が出来ると母は起きてきて僕らに『心配かけてごめんね。お母さんもう平気だからね。』と言い、祖母が作ったカレーライスを美味しそうに食べていた。

いつもの母に戻ってるようで安心し僕は涙を流しながらカレーライスを食べた。
その日、母は家を出て行かなかった。妹と僕と母で川の字で寝た。

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