エレベータ

380 :エレベータ(1/2):2009/08/14(金) 01:25:18 ID:pFDKVMPM0
つい2~3年前に各地でエレベータの不具合による事故が相次ぎ、
大きくニュースで取り上げられたことは記憶に新しいと思う。
こうした問題は、以前はあまり話題にならなかったものの、随分前から存在していたようだ。
私が今から約10年前に通っていた会社でも、
エレベータの不具合による恐ろしい経験をした事がある。
通っていた会社は、都内の歓楽街にほど近い場所にある古い雑居ビルの6階部分を、
オフィスとして使っている小さな会社だった。
仕事が繁忙期に入り、ふと気が付けば23時を少し回った時間だ。
急がなければ自宅に辿りつくのは深夜0時を回ってしまう。
少し焦りながらエレベータホールに立ち、
下行きのボタンを連打してエレベータの到着を待った。程なくして静かに扉が開く。
その時強烈な違和感を感じたのを覚えている。
通常ならエレベータが到着すると同時に「チン」という音が鳴動してから扉が開くのに、
確かその時は何も音がしないまま扉がスーっと開いたのだ。
腕時計に目をやりながら、慌てて開いた扉の向こうに乗り込もうとしていたのだが、
乗り込む直前に目の端に入ったエレベータが妙に暗い事に気が付いた。

ふと嫌な予感がしてしっかり前を見直してみる。
すると、そこには真っ暗な死の世界が口を広げていた。
完全に予想外の出来事だったため、全身の毛が逆立つと同時に冷や汗があふれ出した。
呆然と立ちすくんでいると、開いたときと同様に静かに扉が閉まった。
その後も、つい今しがた見たものが信じられず、恐怖のためまったく動けないでいると、
「ウィ~ン」という静かな機械音がエレベータホールに響き渡り、
しばらくして「チン」という音がしてから、今度は正常にエレベータの籠が到着した。
この話を翌日職場の仲間全員に話した上で注意を呼び掛けたのだが、
当時の仲間は誰一人として私の話を信用してくれなかった。
しかしその数年後、その雑居ビルで同様のトラブルにより、
人が亡くなるという事故が発生したらしい。
もし、あの時慌ててエレベータに乗りこんでいたらと思うと…。
その後、エレベータに乗り込む前には、
扉の向こうに籠があるのか十分に注意してから乗り込むように気を付けていた。
ところが、つい先日新しい職場でやはり遅い時間にエレベータを呼びだしたら、
開いた扉の向こうに真っ暗な空間が…。
心底ドキッとして腰が抜けそうになったのだが、
単純に省電力モードで照明が落とされていただけだったようだ。
まったく最近のエレベータはビックリさせてくれるものだ…。

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