赤ちゃんの泣き声

254 :本当にあった怖い名無し:2008/12/06(土) 16:28:42 ID:WFj2oQDf0
夏頃に旅行中、池袋のホテルに泊まった。
日付が変わった頃にベッドに入ったけど、なんとなく眠れないなと思っていたら急に息が苦しくなった。
どうも何か大きなものに、鎖骨から上をベッドに押しつけられているように身体を起こせない。
手足は動くのに、上はまったく動かせず圧迫されて呼吸もままならない。
ついさっきまで大丈夫だったのになんなんだ?と混乱していると、ふと鏡台のある右手から赤ちゃんの泣き声が聞こえてきた。
ここで(疲れて金縛りになってるのか、そういえば昼間に甥に会ってるから赤ちゃんの声もこの状況に合わせて脳が幻聴作ってるだけかな?)と思った。
でも、どうも違う。
甥が生まれて以来、赤ちゃんでも声の違いは結構わかるようになった。
泣いているのは知らない子だ、隣の部屋だろうかとほとんど酸素を吸い込めなくなってきた頭で考える。
目を開いても真っ暗にして寝る習慣で何も見えない。
なのにその時ははっきりと、這ってくる赤ちゃんの気配を感じた。
怖くなって目を閉じたくなったけど出来ないでいると、顔の横でなにかが止まった。
小さな浅い息の音と、近くなったら逆に小さくなった悲しそうな泣き声。
これはヤバい状況なのかな、と思ったけどもともと子供は好きだ。
しかも甥と同じくらいらしい泣き声に、苦しいのとは別にたまらなくなってしまった。
横で泣いてる子をせめて撫でたい、と試しに右腕を動かそうとしたら大丈夫だったので、そのまま頭の横にいるっぽい赤ちゃんに触った。
裸の赤ちゃんは、柔らかい髪の小さな頭で私の顔を覗き込んでるみたいだった。
呼吸はもうヒューヒュー変な音が出てたけど、まぁいーやって気持ちになってしばらく片腕で赤ちゃん撫でて抱いた。
そしたら段々押しつけてたものが身体の上から外れていって、手の中の赤ちゃんも消えてしまった。
急いで起きて、電気をつけて部屋の中を調べたけど電気を消す前とどこも変わっていなかった。
結局その夜は電気つけたまま寝て、何事もなくチェックアウトできたけど、たまにあの子はまだあの部屋にいるのかなって思い出す。

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