午前零時の子守
半年ほど前のことです。 その日私は友達の家に遊びに行ってました。 夜の10時過ぎまで他愛のない話をしていましたが、ふと外に人の気配を感じ、 窓の外を見ると(その友達の部屋は2階です)、毛布に包まれた赤ん坊を抱いた女が外を歩いていました。 時折その赤ん坊に話しかけている様子が、薄暗い外灯の下からぼんやりと見えました。 こんな時間に?と一瞬怪訝に思いましたが、赤ん坊が夜泣きでもしているから散歩してあやしているのかなと、 納得し、すぐに忘れてしまいました。 それからまたしばらく話し、その友達の家を出ました。 薄暗い裏路地を歩きながら、家に向かっていました。 時計を見ると、ちょうど午前零時を回ったところです。 ふと、前方の暗闇に目を凝らすと、さっきの母親が歩いてきました。 こんな時間までたいへんだな、と思いながら通り過ぎる時に何気なく母親が抱いていた赤ん坊を眺めました。 母親が抱いていたのは赤ん坊ではなく、ボロボロになった赤ん坊の人形でした。