蒼い馬
756: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2005/11/29(火) 23:47:42 ID:LUe3dlOX0 知り合いの話。 彼の叔父さんは、奥山で炭焼きをしている。 泊まり掛けで遊びに行った時に、そこで不思議な動物を見たという。 深夜炭焼き釜の前で談話していると、ふっふっふという音が聞こえた。 「何か来た」と思い外を見やると、蒼白く光る生き物が林の中にいた。 馬だ。大きくはない。しかし仔馬ではないような印象を受けた。 何とも奇妙なことに、馬は身体から薄い光を発している。 月も出ていない暗闇だったが、その身体は闇の中にはっきりと確認できた。 蒼い馬は、下草の中に顔を突っ込んで何やら探している様子。 やがて上げられたその口には、太い蛇が咥えられていた。 そのままかっかっかと一息に呑み込んでしまう。 と、いきなり馬は彼の目を真正面から覗き込んできた。 爛々と光るその目に身が固まった。 「こいつは馬じゃない!馬なんかである筈がない!」 身動ぎも出来ずにいると、馬は彼に興味を無くしたのか自分から目を外した。 あっと思う間もなく、そのまま闇の中へ姿を消してしまった。 「大丈夫か?」叔父さんの一言で我に返る。 足が震えて立っておられず、そのまま尻餅をつく。 「何あれ!?」と問いかけると、あっさりとした答えがあった。 「この山の神様さね」 「水の道を操るのかどうか知らないが、あの馬が地面を蹴飛ばすと、 そこから清水が湧くのさ。干魃の時にもかなり助けてくれたそうだ。」 だからその里では、昔から山神様として敬っているのだと。 「実際向こうにこちらを助けるつもりがあったかどうか、それは本当の ところわからないがね。自分が水を飲みたかっただけかもしれん。 しかしまぁ、そういう訳だからちょっかいは出すなよ」 叔父さんがそう釘を刺すと、それ以上この話題は続かなかった。 彼は今でもちょくちょくそこに遊びに行っているが、あれからその蒼い馬を 見たことはないそうだ。





